RePort.NO.2-04
応答番号:2023-11XX-1
種別:レポート NO.M-04
観測-2018.06
出力-2023.11
-■■■■■■内のレコードを参照、復元します
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(派手な効果音、ゲームによくありがちな演出)
信濃「でぁーーーッ!!必殺!!デウスエクスマキナ!!!」
虎鉄「いえーーー!すげえ!強い!」
信濃「いえ~い、ライトちゃんのコンボ奥義が決まればこの通りですよ!」
虎鉄「流石星五キャラ!ボスが溶ける!」
(手をたたいて喜ぶ音がリビングから。一方台所では夕食の支度をしている音)
阿藤「いい年の男が泊まりに来てやることがソシャゲ……まあいいんだけどさ」
音羽「ソシャゲなのか」
阿藤「うん、なんだっけあれ、アトキセ」
音羽「ああ」
(材料が鍋に入れられていく。
大根、人参などの根菜が鍋底に当たる小気味良い軽めの衝突音。
換気扇の音と、合間にスマートフォンからのBGM)
信濃「ちなみに虎鉄君、シナリオはどこまで進みました?」
虎鉄「俺ねー、あれです!エピソード四の半ば!栄ちゃんが言ってたマリン君出てきた!」
信濃「マリン君!わーっ!」
(包丁が小松菜の根元を切り落とす。その断面が花の様である)
音羽「元気だな」
阿藤「年近いからねえ、オンラインでいつでも喋れるだろうに。
会うとやっぱゲームも盛り上がるものなのかな」
音羽「人によるだろうな。
個人でじっくりやりたい者、
集まって共有したい者、
人がやるのを見て居たい層もいる」
阿藤「あー、ゲーム実況動画、ってのが流行るくらいだしね」
(虎鉄の「あ」という声とメッセージが来たことを伝える跳ねるような着信音」
虎鉄「勝谷さん、びょーいんからの買い物終わったって~」
信濃「あ、じゃあ夕飯間に合う?」
虎鉄「みたい!」
(用が済んだ調理器具がステンレスタライに入れられていく)
音羽「春樹、この布巾洗ってくれ」
阿藤「はいー」
音羽「あとそろそろサラダを作るか、頼んでいいか?」
阿藤「オーケー」
(スリッパの音が二、三歩分。冷蔵庫の野菜室を引き出す)
音羽「『デウスエクスマキナ』か」
阿藤「ん?ああ、さっきの必殺技?」
音羽「三年前の出来事、一部ではそう呼ばれているんだぞ」
阿藤「え?そうなの?」
音羽「関係者以外には真相が分からないままだしな。
その後の情報もやや不自然に統制されている」
阿藤「ま……そのあたりはもやっとすることもあるけど、
世間的にはどうしたもんか、みたいな出来事だったしな」
(それぞれが調理をする音が重なる。
スマートフォンから聞こえていた音楽は止まり、代わりにテレビがついている)
阿藤「なんか、たまに聞く単語だけどどういう意味?」
音羽「デウスエクスマキナ……機械仕掛の神、とは元々演劇用語だ。
詳細を省いて説明すると……物語や劇の中で、『神』が登場し、
問題を解決する、という手法だ」
阿藤「はあ」
音羽「登場人物達や、物語の流れがオチをつけるのではなく、
神或いは神のような絶対的な力によって、オチをつけてしまう。
……というものだな」
阿藤「あ~~、成程ね。賛否両論ありそうな、というか使い方の難しそうなネタだね」
(若干の小声で交わされている)
阿藤「……そっか、あの団体の顛末を、そういったオチに近いとみる人がいるわけだ」
音羽「そういう事だな」
阿藤「神、ねえ」
(サラダ用の野菜を混ぜていく優しい音)
阿藤「……初鳥は、神の子、オリジン、そう呼ばれていて、
絶対的な存在だったわけだけど」
音羽「ああ」
阿藤「実際、俺は――」
音羽「そうだな、お前は」
(鍋の湯が沸く)
阿藤「でも、たまに思うんだ」
(バラエティ番組の笑い声)
阿藤「――あれは本当に『Origin(根源)』だったのか」
(徐々に音を遠くする)
阿藤「果たして、彼は本当に葡萄の木だったのか」
(一瞬停止)
阿藤「その木が根付いていた土壌が、あるのではないか」
(会話の間、全ての効果音を戻す)
音羽「……もしも、再び――何かが起きたら、お前はどうする?」
阿藤「さあ、自分と周囲に関係がないって言うなら、見て見ぬふりをするかもね。
俺はこう見えて、保身家だから」
音羽「しかし、そうではなかったら」
阿藤「それはその時考えるよ」
音羽「そうか」
(インターホンの音)
信濃「あ!勝谷さんだーっ」
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