RePort.NO.2-05
応答番号:2023-11XX-2
種別:レポート NO.M-05
観測-2018.07
出力-2023.11
-■■■■■■内のレコードを参照、復元します
//
(硬質な床にゴ、ゴ、と響く重たいブーツの踵。
歩幅の大きさを感じ取ることができる間に入るように、
別の足音が数歩分)
J-J 「ご苦労様です。
今日は財団関係施設の視察ですかな?」
R-R「なんじゃ、お前か。
暗闇から出てくるんじゃねえよ、悪趣味な」
J-J 「ほほう。煌々とした照明をつけ、
部屋を幕で飾り付けて御帰還を喜んだ方がよいと?」
R-R「……」
J-J 「はっはっは、冗談、冗談ですとも。
笑い飛ばして下され」
R-R「そこそこに機嫌よく帰ってきたのに
不快指数上がりまくりじゃわ」
(どさ、と荷物を置く様子。
ぱち、ぱち、と照明スイッチが鳴る)
J-J 「ああ、そういえば……
今日は孤児院に行かれる日でしたか。
どうでした?子供達はお元気で?」
R-R「心配は要らんし、
お前の上辺繕った白々しい言葉も聞きとうない、
用件を話せ」
J-J 「嗚呼、そう仰いますな。
若い命が活発であることは良い事ですとも、ええ」
(荷物に続いて何か重たい、
大柄な人物が座った時の布が深く沈む音。
しゅぼ、とライターの音がして紙巻たばこの先がちりちりと燃える)
J-J 「ただ、彼らとて
"貴方の目的に巻き込まれる"者たちでしょう?」
R-R「……」
(はあ~~~とため息。
ぼりぼりぼり、と荒々しく頭を掻きながら)
R-R「お前はどうせ汚れるからといって
部屋を掃除せんタイプか?
どうせまた腹が減ると言って飯を食わんでおるのか?」
J-J 「ふーむ」
R-R「嗚呼……貴様にそういう事聞いても無駄じゃったか…」
J-J 「いえいえ、解りますとも!ええ!!
どうせという接頭語をつけて先を見越すことは、
今を怠惰に潰す理由足り得ないという話ですな」
R-R「いちいち大袈裟じゃわ胡散臭い。
ふん。俺はお前と違って目の前の事は真面目にやるんじゃよ。
偽善者と嗤って構わん」
J-J 「そうして私が大笑いしたらどうします?」
R-R「まずは殴り飛ばす」
J-J 「ハッハッハ!!」
(軽快に手を叩く)
R-R「で、さっさと報告せえよ」
J-J 「ええ、はい。…既に耳に入っているかと存じますが、
二番目の鳩が発見されたとの事」
R-R「らしいの」
J-J 「そして私を除く翼達が、其々の賢者へ報告せず
カード切りの遂行を行う動きを見せています」
R-R「ふーん。千里眼が……何か読んだか?」
J-J 「分かりません。しかしどちらにせよ、
六番目の鳩は現状封じられたも同然です。
連中は行動を起こすにしても、
慎重かつ地道な手段を取らざるを得ないでしょうな」
R-R「となるとしゃしゃり出てくる可能性があるのは、
あの脳味噌エンターテイメント野郎共か」
J-J 「ええ、彼らは自身らの気分で
物事を決めますからなあ。
それに今回は、どちらかというと奴らのテリトリー。
我々がおいそれと踏み込むには
中々理由を付けづらい事案にございます」
R-R「しかしのう。俺らも無視はできんじゃろうな。
均衡が破られたという事は、
三年前のように何か大きく動き出す可能性がある」
J-J 「仰る通り」
R-R「…………」
(ふう〜、と溜息とは異なる深い吐息。
それは肺に取り込んだ紫煙と交換した空気の束である。
考えの間、両者の言葉なく時計が秒を刻む)
R-R「ところで"アレ"の隠し場所について、
あの報告通りで間違いないんじゃな?」
J-J 「ええ、九割……あそことあそこでしょう。
我々の察知に気付いて動かしていない限りは。
アーティファクトの持ち主を変えるというのは
――やはり何事においても軽々しくは行えませんからな」
R-R「ふーーーん」
(音になるかならないか程度、
ガラスの灰皿の縁で煙草が叩かれる。
灰の塊が既に淀んだ底に落ちる)
R-R「此度の事件について、お前は茶々を入れるな。
我々は静観する。解決は奴らに任せよ」
J-J 「良いのですかな?」
R-R「それよりこの隙にアーティファクトの回収準備をはじめい。
六の機能が停止しとるうちにな。
奴らの状況も逐一報告しろ」
J-J 「ではその通りに。――という事は」
R-R「ああ、例の計画を進め始める」
(首元に連ねられた多数の貴金属が重なり擦れて軋む)
R-R「そろそろ、仲良しごっこは終わりじゃなぁ」
//